なかなかタイミングがなくて投稿してなかった公式ブログですが、稲刈りが始まる前に少しくらいは更新しておこうと思います(実質2年間何もやってない)
というのも、内容が薄すぎて大体はTwitterやインスタグラムで十分済んでしま、いえ、SNS様がとても優秀なのでブログを書く機会を逸しておりました。
では何を書こうかなと考えてみたんですが、
日々の畑の様子やカエルの画像はSNSで呟けば十分なことですし、ならこのブログではコラムや過去に書いた伝統野菜の記事のような、
当園を応援していただける皆様にとって少しでも有益な情報を提供できるものにできないか、と考えました。
といってもいきなり特にコラムの内容は思いつかなかったので、今回はあまりよく説明していなかった当園のスタンスについてのお話をします。
いきなりどうでも良さそうな内容になりそうですね!!!
そもそも有機栽培農家なのか?
たまに訊かれる質問です。まず答えを言うと、当園は有機栽培農家ではありません。有機栽培みたいなことをしている農家です。
これには理由がありまして、有機栽培というのは日本国内においては有機JAS認証という厳格な基準を満たす圃場資格を有する農家のみが本来標榜できるものだからです。
当園では有機JASについては現時点では取得しておりません。なので当園は有機栽培農家ではありません。
有機JAS制度ってなに?
有機JAS制度というのは、ざっくりいうと「人工的に反応させた化学物質を用いらない」栽培方法を圃場ごとに第3者機関が認証する制度です。
要するに化学肥料や一般農薬等を使用しないで作物を育てましょう~上手にできたら認証してあげる!ということですね。
が、誤解されている方を散見しますが、ここで重要なのは有機JAS=無施肥無農薬ではありません。
肥料については堆肥や緑肥、天然の油粕や海産系資材等の有機肥料が利用可能です。
また農薬についても同様で、BT剤などの自然界で発見・抽出された成分の農薬等、登録を受けている薬剤は利用可能です。
有機JASはあくまでも「人工物の排除」と、それぞれの資材等が連続的な繋がりを持つ「有機性の担保」が目的になります。
なんで有機JAS取得してないの?
なぜ当園が取得していないのか、というと、正直当園にとってメリットが得られないからです。
ちなみにメリットが「ない」のではありません「得られない」のです(ここ重要)
若干失礼な言い方にも聞こえるかもしれませんが、有機JASの認知度はまだまだ発展途上です。またその取得には相当量の労力と経費を必要とします。
さらに言うと、使用する資材や農薬等にも厳格な規制がかかり、農薬はともかく、一般的なマルチシートはもちろん、ネギの移植時に利用するチェーンポット等も使用できません。
この条件下では、現時点の当園では品質を維持することは不可能であり、無理に取得したとしてもむしろデメリットだけが顕在化します。
つまり、簡潔にまとめると「当園の力量不足」が原因です。
有機JASは必要なのか、意味があるのか?
有機JASが必要かと訊かれれば、今の当園には必要ない、です。
正確に言えば、上述のように有機JAS認証を現在の当園では十分に活用することができないということです。
それだけ有機JASというのは取得のハードルが高く、その分認証にも重みがあります。しかしただ取得すればいいというものではなく、それを活かせるだけの経営力と合わせてこそ真価を得るものです。
その市場価値については賛否もありますが、有機JASを取得し活用できるというのは、その農園の基礎技術力の高さと責任感、経営力の強さを証明しています。
なので、有機JAS認証は消費者に対する責任感の表現方法として、とても重要な意味を持つものだと私は考えています。
当園の取り組みと今後について
当園では現時点でできる取組として、緑肥や有機肥料による土づくり、BT剤の使用等を行っています(農園紹介ページもご覧ください)
今後、栽培体系の整理・効率化、栽培技術の向上と付加価値添加のためにも有機JAS認証の取得は直近のひとつの目標としています。
私どもは現時点においても最大限の責任と誠意をもって栽培作業に及んでいます。これを担保するためにも有機JAS取得を目指して精進していきます。
最後に、これは個人的な私見ですが、有機栽培というのは高温多湿の我が国では、現在の慣行栽培にとって代わるものにはなり得ないでしょう。攻殻●動隊みたいな高度なアンドロイドやナノマシン、無限に動き続けられる義体などが生まれれば話は変わるかもしれませんが笑(それを有機栽培といっていいのかは謎です)
また、慣行栽培の安全性も、戦後70年の歴史と日本人の長寿命化が証明しています。
戦前の日本人の平均寿命はわずか50歳前後。
そもそも乳幼児の死亡率が高かったので一概には言えませんが、今日までの様々な先人たちの不断の努力と科学的探究心のおかげで、我々日本人の寿命は80歳前後まで長寿化し日々美味しいお米が安定して食べられています。
この先達の不屈の精神に対するリスペクトは絶対に忘れてはいけません。
しかし、残念ですがSNS界隈をふと覗くと、有機だの慣行だのと言って対立を煽り、いがみ合うことを良しとする人たちも一定数存在します。
これこそ消費者を無視した不毛な争いです。
農業もあくまでも経済活動の一環であり、需要と供給のバランスが大切です。
そして安定供給や均一化に特化した慣行栽培、独自性や環境負荷に特化した有機栽培などそれぞれの特技を活かし、お客様のご要望に細やかに対応して共存してこそ、慣行栽培も有機栽培も本当の意味を持ちます。
何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」といいますし、日本の文化は常に良いものは受け入れ自分のものにする「折衷」を良しとしてきました。
だからこそ、みんなお互いの利点を受け入れて技術の向上に励み、リスペクトをもってフェアに戦いたいものですね。
以上、長々と駄文乱筆失礼いたしました。